家と外で態度が変わる人がいないでしょうか。そうした人を内弁慶といいます。内弁慶の人は、外では大人しく、家では偉そうな態度を取るように二面性があります。

家族に八つ当たりしてしまい、内弁慶な性格を改善したい思う人もいるでしょう。そこで内弁慶な人の特徴や心理、改善方法について解説します。

内弁慶の意味とは

二面性のある人

内弁慶とは、外では大人しく、家では偉そうに振るまうことを意味します。内弁慶の「内」とは「家」のことです。外では大人しく、家ではよく喋るなど、家と外で態度が違う人のことを内弁慶と言うこともあります。

弁慶の由来は、平安時代の僧兵・武蔵坊弁慶です。弁慶の強さにたとえて、家で強い態度になる人を内弁慶と表現するようになりました。

内弁慶の類語には、引っ込み思案、人見知りなどがあります。引っ込み思案とは、積極的に行動できない性格のことです。

人見知りは、人目を気にしすぎて行動できない性格を意味します。内弁慶の人の場合、外で引っ込み思案や人見知りの態度になりやすいでしょう。

内弁慶な性格の人は、なぜ外では思うように行動できなくなるのでしょうか。内弁慶な人の特徴や、内弁慶になる原因について解説します。

内弁慶な人の特徴

意見を言えない

内弁慶な人は、家では自分の考えを素直に言えますが、外では自分の意見を言えません。

家族と意見が合わないときは喧嘩もできますが、外では自分と違う考えを持つ人にも従ってしまいます。嫌われたくない思いから、人の意見に反論できません。

外で我慢しやすい分、家に帰ると家族にストレスをぶつけてしまいがちです。しかし家族は信頼できるので、八つ当たりしても嫌われるはずがないと思っています。

外面が良い

外面が良いのも内弁慶な人の特徴です。良い人だと思われたいので、人前では優しい性格を演じます。しかし本来の自分でない姿は、ストレスがかかる状態です。そして、外で我慢したストレスを家族にぶつけます。

外面が良いタイプの内弁慶は、家のことを話さない傾向があります。他人に家族の話をすると、自分が内弁慶であることが分かってしまうからです。また日頃から家族に八つ当たりしている人は、罪悪感から家族の話題を避けることがあります。

家庭内でモラハラを起こす人も、内弁慶な性格の傾向があります。外では温厚な性格、家では傲慢な態度と二面性がある人です。二面性が強い場合、家族が「乱暴な性格の家族に困っている」と相談しても、他人に信じてもらえないことがあります。

外で愚痴を言わない

内弁慶な人は、外ではあまり愚痴を言いません。外で愚痴を言わないのは、ネガティブなことを言うと嫌われると思っているからです。プライドが高い人の場合は、自分の弱みを見せたくない気持ちから愚痴を話しません。愚痴は弱音で、弱音を吐く人は情けないと思っています。

愚痴を吐くのはネガティブな行為です。しかしコミュニケーションができる人は、会話にうまく愚痴を取り入れます。適度に愚痴を言うことは、相手に親しみを持たせたり、人の心を引きつけると分かっているからです。

内弁慶な人は、不満や愚痴を言わない態度が完璧主義に見え、近寄りがたい印象を与えていることがあります。結果、愚痴を話せるような友人が作れず、家でしか仕事や家族への愚痴、不満を吐き出せない状態になっていることがあります。

外では無口になる

内弁慶な人は、外では口数が少なくなります。内面では喜怒哀楽を感じていますが、態度に出すことはしません。外で緊張しやすい人や、プライドが高く、人前では冷静であろうとする人が無口になりやすいです。

家に帰ると気が抜けるので、素の自分をさらけ出しやすくなります。家と外でのギャップがある人ほど、内弁慶と思われやすいでしょう。

内弁慶な人の心理

ストレスが多い

内弁慶な人は、外で自分の気持ちを我慢しやすい分、ストレスを抱えやすくなります。ストレスを趣味などで発散できるのが、上手なストレスへの対処法です。しかし家族にストレスをぶつける方法しか知らないので、内弁慶だと思われてしまいます。

コミュニケーションが苦手な人も、ストレスを抱えやすいです。自分の言いたいことをうまく相手に伝えられないので、人と話すのを避けてしまうことがあります。うまく話せない自分にストレスを感じ、家に帰って不満や愚痴を吐き出すのが癖になっていることがあります。

欠点を知られたくない

外面が良い人やプライドが高い人は、自分の欠点を他人に見られることを恐れます。欠点を知られると、人に見下される、嫌われるなどの強迫観念を抱えているからです。

そして完璧な自分を演じようと、本当の自分を隠そうとするのが特徴です。しかし自分の感情を抑え続けるのは、強いストレスがかかります。外で我慢できても、家に帰るとストレスを抑えられず、愚痴や不満が出るようになります。

人を信用できない

内弁慶な人は、人間関係に敏感な面があります。人の気持ちがよく分かるので、嫌な面を見てしまうと人間不信になりやすいです。繊細な人ほど、人を信用できず「信じられるのは自分だけ」と考えている場合もあるでしょう。そのため、他人と話さず内弁慶になることがあります。

過去のトラウマから人間不信になった人も、内弁慶になることがあります。トラウマとは、傷つくことをされたり、自分が人を傷つけた後悔などです。もう同じことはされたくない、繰り返したくないという思いから、人間関係を避けて内弁慶になることがあります。

気を遣いやすい

真面目な人は、外では気を遣いやすいので内弁慶と思われることがあります。真面目な人は他人に丁寧な態度を心がけますが、相手は距離を置かれているように感じることもあるでしょう。家族や友人に対する態度と差が大きいほど、内弁慶だと思われやすくなります。

気が強い性格の人は、あえて無口になることがあります。自分の意見を言わないのは、他人と衝突するのを避けるためです。外でトラブルを起こしたくないので、内心はイライラしていても我慢します。外で我慢している分、家では素の性格でいると、内弁慶だと思われやすいです。

安心感がある

外で緊張しやすい人は家に帰ると安心し、素の自分をさらけ出しやすくなります。家族の前では、素の自分でいても大丈夫という安心感があるからです。

家では偉そうな態度の人も、家族には何をしても嫌われないという安心感があるために、偉そうな態度を取ることができます。

自信がない

自信がない人は自己主張が苦手なので、外では自分の意見を言わず大人しくします。他人の言うことばかり聞いている状態は、ストレスがたまりやすくなります。

自信がない人は、他人に依存しがちです。内弁慶な人は家族に依存するので、家族に八つ当たりしてストレス発散しようとします。家族は許してくれると思う甘えの心理から、家族に繰り返しストレスをぶつけてしまいます。

家族に自慢ばかりする人も、自信がない人です。外では発言できないので、家族には自分がすごい人間だとアピールします。自慢を繰り返すのは、家族に認められたい気持ちがあるからです。

プライドが高い

プライドが高いと、自分を良く見せようとするため内弁慶になることがあります。

立派な人だと思われたいので、人前では怒ったり、弱音を吐くことはしません。しかしストレスはたまるので、家では愚痴を言ったり、家族に八つ当たりすることがあります。

平和主義

本音で話すとトラブルが起こりやすいと思う人は、自分の意見を言わないことがあります。周囲のことを考えて内弁慶な態度を取る人です。他人の意見を尊重し、人と争うのを避けます。

自分一人でいるときは自由に行動するので、態度の違いが内弁慶に見えることがあります。[/text]

態度の切り替えができる

自分が内弁慶であると、自覚している人もいるでしょう。自覚している人は、家と外でコミュニケーションを上手く使い分けています。

例えば真面目で内弁慶な人は、外では礼儀正しく、人から嫌われないよう気をつけています。家では素の姿で生活しているので、外と家でのギャップがある人ほど内弁慶と思われやすくなります。

家庭環境

親が怖かったなど、子供の頃の環境が原因で内弁慶になることがあります。親が怖い存在だと、自分の意見を言えないまま成長します。すると大人になっても、自己主張が苦手になりがちです。対人関係が上手くいかずストレスを抱えることがあります。

ストレスを抱えたまま家庭を持ったとき、子供の頃から抱えていたストレスを家族にぶつけてしまうことがあります。家族に八つ当たりするのは、誰かにありのままの自分を受け入れてほしい心理があるからです。

内弁慶を直すための対処法

嫌われてもいいと思う

自己主張が苦手な人は、嫌われてもいいと、開き直った気持ちで話してみてください。自分の意見を言わないと、何を考えているのか相手に伝わりません。結果、人と仲良くなりづらい、はっきりしないので八方美人だと思われるなどの原因になります。

素直な意見を言うと、それに反対する人も出てくるでしょう。しかし、自分の意見に賛同してくれる人も現れます。「一人の敵も作らぬ人は、一人の友も作れない」という言葉があるように、自分の意思を示すことで敵だろうと味方だろうと、人との関わりが生まれます。

意思を示さなければ敵も味方も現れませんが、現状は何も変わりません。孤独が嫌なら、素直に自分の気持ちを人に話すことを意識してみてください。

八つ当たりしない

自分のストレスを家族にぶつけても、何も良いことはありません。内弁慶な人は、八つ当たりしても家族は許してくれると考える傾向があります。しかし同じことを続ければ、家族も離れてしまいます。八つ当たりの改善には、思いやりの心が必要です。

八つ当たりされた相手の気持ちを考えてみてください。自分が他人から八つ当たりされたら、相手が家族でも嫌だと思うのではないでしょうか。暴力や暴言が酷ければモラハラです。自分のストレスは趣味や運動で解消するなど、別の対処法を考えましょう。

趣味を見つける

ストレスを家族にぶつけるのでなく、趣味がある人は趣味に没頭してみてください。趣味がない人は、興味のあることを始めてみてください。

すぐに始められるのは、運動や筋トレです。体を動かせばストレス解消になり、体を鍛えれば心も鍛えられます。

講座・カウンセリングを受ける

コミュニケーションに自信がない人は、話し方講座を受ける改善方法があります。人との関わり方を基礎から学び、実践することでコミュニケーション能力を上げていきます。一人で内弁慶を治す自信がない人も、指導する人がいれば続けやすくなります。

内弁慶な性格で悩んでいるときは、電話相談やカウンセリングを受ける方法もあります。カウンセラーと話すことで、自分が内弁慶になった原因や、家族に八つ当たりする理由などが分かりやすくなります。ストレスが強いときは、一人で抱え込まず相談してみましょう。

内弁慶の反対・外弁慶とは

内弁慶の対義語に、正式な言葉はありません。ただし外弁慶と言われることがあります。外弁慶とは、外では偉そうに振るまい、家では大人しくなる性格を意味します。ただし、外弁慶という言葉は辞書に記載されていません。

内弁慶と同様に、外弁慶になる人にも性格の共通点があります。そこで、外弁慶な人の特徴を解説します。

自慢が多い

内弁慶は家族に自慢しますが、外弁慶は他人に自慢するのが特徴です。自慢が多い外弁慶は、家で話を聞いてくれる人がおらず、寂しい思いをしていることがあります。

そして人の注目を集めようと、外で自慢ばかりすることがあります。承認欲求が強く、人から認められたい気持ちがあるほど、外で自慢することが多いでしょう。

人を見下す

他人を見下すのも、外弁慶の特徴です。家族から尊敬されていない人は、強い劣等感を抱えていることがあります。そして劣等感を埋めるために、他人を見下すことがあります。

ネットで人を見下す発言をするのも、外弁慶の特徴です。家や職場では言いたいことを言えないので、他人を見下すことで自分のプライドを保とうとします。

ストレスが多い

内弁慶の人と同様、外弁慶の人もストレスを抱えがちです。

外弁慶の子供は、親の前では良い子でも、学校で教師に反抗する、友人を困らせるなど問題行動を起こすことがあります。親から嫌われないよう家で大人しくしている分、ストレスを外で発散している状態です。

子供だけでなく、大人も同じです。大人の場合は、ストレス発散の場が学校から職場に変わります。

外弁慶になるのは、親子または夫婦間の信頼関係が原因です。外弁慶の子供は「良い子でいなければ親に愛されない」、夫婦の場合は恐妻家、モラハラ夫などが原因で「言うことを聞かないと離婚される」など恐怖感、ストレスを抱えています。

問題行動が多いときは、親子間、夫婦間で話し合いをする必要があるでしょう。

内弁慶・外弁慶には思いやりが必要

内弁慶でも外弁慶でも、人に迷惑をかけなければ問題はありません。家族や他人に八つ当たりしてしまうなら、その部分は改善した方が良いでしょう。

ストレスは人にぶつけるのではなく、運動で発散するなど、プラスの力に変えて昇華させることを意識してみてください。