見捨てられ不安とは、身近な人に見捨てられたり、嫌われることを強く恐れる人のことです。

見捨てられ不安があると、他人を信用できないため人間関係が上手くいかない原因になることがあります。

なぜ見捨てられ不安が生まれるのか、心理や対処法について解説します。

見捨てられ不安がある人の特徴

コミュニケーションが苦手

見捨てられ不安がある人は、他人と接することに不安があったり、距離感を掴むのが苦手な傾向があります。

対人恐怖から対等なコミュニケーションを取るのが難しく、相手の顔色をうかがうような、下手に出るような態度になりやすいです。

また好きな相手には見捨てられないよう尽くし過ぎるなど、極端な行動を取ることがあります。

利用されやすい

見捨てられ不安がある人は、都合の良い存在として扱われることがあります。

相手から見捨てられたくない気持ちがあるために、相手の言うことに何でも従ってしまうことがあるためです。

何を頼んでも断らないと思われると、相手の要求がエスカレートすることがあります。

人目を気にする・詮索する

見捨てられ不安がある人は、自分が人からどう思われるかを強く気にします。

そして自分が皆から嫌われていないか、置いて行かれていないかを確認するために詮索します。

一人でいることや、皆と違っていることを恐れるため、常に誰かと一緒にいようとするのが特徴です。

試し行為をする

見捨てられ不安がある人は、相手を試すような行動を取るのが特徴です。

わざと自分を傷つけたり、相手を困らせるようなことを言います。

相手を試すことで、どれだけ自分を大切に思ってくれているかを確認しようとします。

自分から離れる

見捨てられ不安がある人は、自分から相手と距離を置くことがあります。

相手を信用できない、あるいは自分と一緒にいても楽しくないだろう、いずれ見捨てられるだろうという思い込みがあるためです。

捨てられて辛い思いをするくらいなら、自分から先に相手から離れようとします。

束縛する

見捨てられ不安がある人は、大切な人を束縛するのが特徴です。

見捨てられるのではという不安があるために、相手が疑われるようなことをしていなくても行動を監視しようとします。

束縛する人は自信がなかったり、人間関係のトラウマを抱えていることが多いです。

邪魔をする

相手の努力を応援できず、邪魔する人は見捨てられ不安を抱えていることがあります。

見捨てられ不安がある人は、大切な人が自分から離れていきそうであれば阻止しようとします。

新しいものに興味を持たせないようにする、わざと足を引っ張ることをするなど、自分の方に注目させようとします。

独占欲が強い

見捨てられ不安がある人は自分の好きな人を独占しようとします。

好きな人が他人と仲良くしているだけで、無視されているような、置いて行かれるような不安を覚えるためです。

自分以外と関わらないでほしいという、独占的で支配欲が強い傾向があります。

見捨てられないように努力する

人から見捨てられないために努力したり、尽くしたりするのも見捨てられ不安がある人の特徴です。

努力しますが、それは人に認められるためにしていることなので、次第に「どうしてこんなに頑張らなければならないのか」と不満が溜まっていきます。

自己犠牲を続けているとイライラしやすくなり、感情的になったり、衝動的な行動に走ることがあります。

感情的・衝動的

見捨てられ不安がある人は努力し過ぎてストレスが溜まったり、相手から見捨てられそうになると感情をコントロールできなくなることがあります。

泣く、パニックを起こすなど感情的になったり、自傷行為や相手を傷つけるなど衝動的な行動を取ることがあります。

他人からすれば突飛な行動に見えますが、本人は思い詰めた上で破壊行動を起こします。

自分の不安を人に相談しなかったり、妄想に捉われやすいので思い詰めることがあります。

プライドが高い

見捨てられ不安がある人は、プライドが高く偉そうに見える場合もあります。

自分を強そうに見せることで関心を引きつけたい、見捨てられて馬鹿にされたくない気持ちがあるためです。

特に依存している相手に対して命令的な態度を取ることがありますが、それは支配欲であり、自分から離れていかないでほしいという不安の表れです。

見捨てられ不安がある人の心理・原因

他人軸で生きている

見捨てられ不安がある人は、自分の存在価値を他人の判断に委ねています。

自分の存在価値を他人に受け入れてもらえるかどうかで判断しているので、人の顔色をうかがいます。

そして人に認められないなら、自分は生きる価値がないという思い込みがあります。

自己肯定感が低い

見捨てられ不安がある人は、ありのままの自分では嫌われるという思い込みを持っていることがあります。

ありのままの自分には価値がない思っているので努力して真面目な優等生になろうとしたり、偉そうな態度で自分を強く見せようとします。

見捨てられないため、見下されないために人前で弱みを見せない、完璧な自分を演じようとします。

妄想に捉われやすい

見捨てられ不安がある人はコミュニケーションが苦手で、些細なこともネガティブに考える癖があります。

対人関係で不安があると、「変なことを言ってしまったのでは」「嫌われたのでは」のように、自分の発言や態度で悩みがちです。

相手に直接聞かないので、自分でネガティブな妄想を生み出してしまい、それが見捨てられ不安になります。

見返りを求めている

見捨てられ不安がある人は損得勘定があり、今まで相手に尽くした分、相手に離れてほしくないと思っていることがあります。

無駄にしたくない、取り戻したいという気持ちがあるからこそ相手に執着します。

「私はあなたのために○○をした」のように、したことを覚えている人は見返りを求めています。

依存症

見捨てられ不安がある人は、他人に依存的です。

人の役に立って初めて自分は存在しても良いと思っているので、自分の存在価値を求めるために尽くしたり、束縛します。

また見捨てられ不安が強い場合は浮気を繰り返すなど、複数人に依存することがあります。

家庭環境・愛着障害

親に放置されていた、条件付きの愛情しかもらえなかったなど、愛情不足の環境で育った人は相手の顔色をうかがうようになることがあります。

親に認めてもらえなければ存在する価値がないという思い込みが抜けていない人は、他人に対しても親に対する態度のようなコミュニケーションを取ることがあります。

病気・障害

見捨てられ不安が強い原因には、人格障害や精神疾患が関係していることもあります。

例えば境界性人格障害の特徴の一つに、人から見捨てられることに強い不安感を持つ症状があります。

また感情豊かであり自分の感情をコントロールするのが難しい、思い込みから極端な判断をする、自傷行為のような試し行動を取るなど感情に支配されやすい面があります。




見捨てられ不安があるときの対処法

被害妄想を自覚する

見捨てられ不安がある人は、相手から連絡の返事がないだけで「無視された」「裏切られた」のように考える傾向があります。

しかし、事実はただ返事が来ていないというだけのことです。

相手は忙しいのかもしれませんし、気付いていないだけという場合もあります。

「無視された」「裏切られた」というのは、自分の観念や過去の体験から生まれた被害妄想です。

自分の受け止め方に疑問を持つ、別の可能性を考えてみる、そのことに意識を向け過ぎないなど、妄想に捉われないよう意識することが大切です。

他人軸で生きているのを自覚する

見捨てられ不安がある人は、他人に認められることが自分の存在価値、理由になっていることがあります。

それは幼少期の親との関係などで、他人軸で生きる癖がついているのかもしません。

しかし他人の評価とは一定ではなく、気分によって評価を変える人もおり、そういう曖昧なものに価値基準を置いていると不安を生みやすくなります。

他人軸で生きることが悪い訳ではありませんが、行き過ぎれば自己犠牲するようになります。

他人がどう思うかより、自分が何をしたいかで物事を決め、徐々に自分軸も取り入れていく方が生きやすくなるでしょう。

自分を客観視する

見捨てられるような不安感に振り回されると被害妄想が生まれます。

不安を感じたときは「今自分は妄想して不安になっている」と、自分の心を客観視することが大切です。

自分を一歩引いて見られるようになると、感情に振り回されにくくなります。

日記を書く

見捨てられ不安や思い込みが強い場合、日記を書くのも効果的です。

日記を書くと自分の心情を客観視しやすくなります。

また、そのときはそうに違いないと思い込んでいたことでも、後で読み返すと勘違いや思い込みだったと気付きやすくなります。

自分がどういうときに思い込みを抱いたり、妄想に捉われる癖があるのか、客観視しやすくなるでしょう。

ルールを決める

見捨てられ不安がある人は、不安感から相手を監視するような行動を取ることがあります。

監視行動は相手の心が離れる原因になるので、自分でルールを決めて制限した方が良いでしょう。

○時~○時は連絡しない、連絡は一日二回までのように、自分でルールを決めて過剰な行動を取らない習慣を意識してみてください。

見捨てられ不安がある人との付き合い方

適度な距離感を保つ

見捨てられ不安がある人に依存されたくなければ、適度な距離感を保つことが大切です。

見捨てられ不安がある人は自分を受け入れてほしい気持ちが強いので、自分に優しくしてくれる人に依存しやすいです。

かと言ってわざと冷たい態度を取ると嫌われていると勘違いされる可能性もあります。

依存されそうな雰囲気があれば自分のことは自分でどうにかするよう自立を促し、何でも手助けしないで、適度な距離感を保つことが大切です。

味方を作る

見捨てられ不安がある人は、自分の思ったような反応が返ってこないと傷つけられた、裏切られたと被害妄想を抱いて、突然攻撃的になることがあります。

陰湿な場合は悪い噂を流すなど嫌がらせに走る人もいるので、周囲に味方を作るか、日頃から信頼される態度を心がけることも大切です。

否定せず冷静になってもらう

見捨てられ不安がある人は思い込みが強く心配性な面があります。

しかし「それはあなたの思い込みだよ」と最初から否定するよりも、どうしてそう感じるのか理由を聞いてみましょう。

最初から否定してしまうと、自分を受け入れてくれないと思って感情的になったり、心を閉ざしてしまうことがあります。

相手の不安感を受け入れた上で思い込みであることを客観的に説明したり、見捨てないことを言葉で伝えた方が話を聞いてくれるでしょう。

できること・できないことを伝える

見捨てられ不安がある人は依存的な傾向があるため、自分にできることとできないことを伝えておくことは大切です。

例えば見捨てられ不安がある人に、急に「会いに来てほしい」と言われたら、「今すぐは行けないけど、○時には行ける」というように提案してみましょう。

「ここまではできるけど、これ以上は無理」という区切りがないと、お互いにストレスを抱えて共依存に陥る可能性があります。

自分の気持ちを伝える

見捨てられ不安がある人は、感情が不安定なため感情的になったり、試し行為のように愛情確認することがあります。

そういう態度が繰り返されるなら、自分の気持ちを伝えてみましょう。

  • 「感情的になられては話し合いもできないし、聞いている方も疲れる」
  • 「試されているこちらの気持ちを考えたことはあるのか、自分が逆の立場だったらどう思うか」

のように伝えてみると、自己中心的になっていることに気付いてくれる可能性はあります。

貰い物は返す

見捨てられ不安がある人と離れたいのに執着してくる場合、損得勘定が強い可能性があります。

「あれも、これもしてあげた」「誰のおかげで~」のように恩に着せる発言が多い人はその可能性が高いです。

今まで尽くした分の見返りが欲しいと思っているので執着します。

そのためお金や高価な物などを受け取っているなら、返せるものであれば返した方が良いでしょう。

返してもらうことが目的ではなくても、借りがある状態のままだと、相手はそれを関わるきっかけにするからです。

時間は返せませんが、返せるものは返しておくと相手の執着も薄れる可能性があります。

距離を置く

接し方に気を付けても見捨てられ不安が改善されないなら、距離を置くことも考えてみましょう。

依存的に生きてきた人ほど、今更自分の生き方を変えようと思う人は少ないからです。

彼(女)らには、経済的にも、精神的にも他人にどうにかしてもらった方が人生は楽だという思考があり、そういう人には自分と向き合おうとする意識が生まれません。

例えば、試し行動は本来子供が親の愛情を確かめるためにすることで、直らないということは、子供の心のままで変わる気がないということです。

精神的問題を抱えている人と長期間過ごすと自分も精神を病むため、付き合い切れないと感じたら距離を置くことも必要です。

こちらから離れることで、相手も依存し過ぎていたことに気付く可能性もあります。