パニック障害とは、突然激しい不安感や恐怖感に襲われる病気のことです。理由もなく激しい不安に襲われる場合は、パニック障害の可能性があります。今回は、パニック障害の症状や治療方法についてご紹介します。

パニック障害とは?


予想していないことが起こったときに「パニックを起こす」というように、パニックと言う言葉は日常でも使われる言葉です。しかし、パニック障害の場合は、理由もなく突然激しい恐怖と不安に襲われ、「このまま死んでしまうのではないか」と思うほどの気持ちになります。

パニック障害の発作が繰り返し起こることでクセになり、日常生活に支障を来たす場合は、治療が必要になります。パニック障害は広場恐怖症と合併することが多い病気で、パニックが起こったときに自由に移動できない場所に恐怖を抱く症状です。広場恐怖症を併発している場合、教室やバス、電車など、自由に身動きが取れない場所で、パニック発作が誘発されてしまいます。

パニック障害になると苦手な場所に行くことが不安になり、パニックが起こりそうな場所を避けるようになります。恐怖心が強い場合は、電車に乗れない、教室に長時間座っていられないなど、生活が大きく制約されてしまう場合もあります。

パニック障害は治療できる?


パニック障害は薬の効果を期待しやすい病気です。ただし、広場恐怖症を併発している場合は治療に時間がかかり、不安が消えないことによって、パニック障害が再発する場合もあります。

パニック障害を早めに治療することで広場恐怖症の発症を抑えやすくなるため、特定の場所で不安感が強くなる場合は、早めに治療することが必要になります。

パニック障害の症状は?


パニック障害の症状には、パニック発作、予期不安、広場恐怖などの特徴的な症状があります。3つの症状が連鎖することにより、パニック発作を悪化させる悪循環の原因になります。パニック障害を放置しておくと、不安感から苦手な場所や状況を避けるようになり、ますます苦手意識が強まってしまいます。

生活範囲が少しずつ狭まることで学校や職場に行けなくなり、自宅に引きこもってしまったり、不安や外に出られないストレスが蓄積することで、うつ状態になってしまう場合もあります。

パニック発作とは?


パニック発作とは、精神的な不安から引き起こされる発作のことです。パニック発作が起こると、強烈な恐怖や不安、息苦しさに襲われます。パニック発作は症状を繰り返すにつれて、不安や恐怖の程度が強まっていく特徴があります。人によっては過呼吸を起こしてその場にしゃがみ込んでしまい、救急車で運ばれる方もいらっしゃいます。

パニック障害になる原因は?


パニック障害は、教室やバス、電車の中など身動きが取れない場所で何らかの嫌な思いをしたきっかけが原因で発症したり、日頃の家庭や職場、学校で抱えているストレスが原因で発症することもあります。パニック障害の診断は、きっかけが分からない不安の発作が2回以上発症した場合に認められる病気です。

パニック障害の精神的な症状は?


パニック障害の気分的な症状としては、「自分の気持ちをコントロールできない」「気が狂ってしまう」「このまま死んでしまうのではないか」といった不安感や恐怖感が強くなります。一度発作が起こると、自律神経の交感神経が優位になります。交感神経が優位になると、体や心は過緊張・興奮の状態になるため、体や心がストレスに晒されます。

パニック障害の身体的な症状は?


パニック障害の身体的な症状には、動悸や脈拍の増加、息苦しさや息切れなどの症状が現れます。緊張状態から過呼吸になることで、めまいやふらつき、口が渇くといった症状もあります。

交感神経が優位になることによって、汗をかく、手足が震える、吐き気や下痢、寒気、体のほてりを覚えるなど、様々な症状が表れ始めます。

パニック障害の診断基準は?


パニック障害の診断基準は、精神的・身体的に表れている症状を診断基準に当てはめていくことで診断していきます。単純に診断基準だけでパニック障害と認められる訳ではなく、病院では医師が診察の中で患者の様子を見ながら、細かく診察していきます。

パニック障害の国際的な診断基準として、DSM-5やICD-10といわれる診断基準があります。今回は、DSM‐5という診断基準が分かりやすいので、DSM-5の診断基準をご紹介します。

パニック障害のDSM-5の診断基準
・繰り返される予期しないパニック発作が2回以上起こる
・パニック発作がまた起こるのではと心配する不安感がある
・パニック発作が起こりそうな場所を避ける
・発作を起こすような身体的な病気を発症していない
・アルコールや薬を飲んでいない

以上の診断基準に当てはまる方は、パニック障害の可能性があります。

広場恐怖症の診断基準は?

パニック障害と併発しやすい広場恐怖症のDSM-5の診断基準についてもご紹介します。以下の状況で2つ以上不安や恐怖感を感じる場合は、広場恐怖症の可能性があります。

広場恐怖症のDSM-5の診断基準
・公共交通機関の利用(自動車・バス・列車・船・航空機など)
・囲まれた場所(店・教室・映画館など)
・広い場所(駐車場・市場・橋・遊園地など)
・人混み、列に並ぶ
・一人で外出する

広場恐怖症の診断基準の場所は、「自分でコントロールできないこと」に対する恐怖が関係しています。広場恐怖症の恐怖心は、「逃げ出せない状況」や「助けを得られない状況」に対する恐怖になります。広場恐怖症の場合、パニック障害と同様に、苦手な場所を避けようとしてしまいます。

パニック障害の原因は?


パニック障害は元々は心因性の病気と考えられていましたが、現在は何らかの脳の機能的異常があると考えられています。パニック障害が脳の機能的異常と考えられる理由には、抗うつ剤の効果が認められやすいことが挙げられます。

パニック障害の発症原因には、遺伝的要因と環境要因の2つが関係していると考えられています。パニック障害は環境要因で発症するケースが7割ともいわれるため、誰でも発症する可能性のある病気ともいえます。

また、パニック障害は女性が男性の2倍発病しやすいといわれるほど、性別によっても発病率が異なっています。

パニック障害になりやすい人は?


パニック障害を引き起こしやすい環境要因としては、性格傾向やトラウマなどのストレス、カフェイン、喫煙などが原因になるといわれます。

生活習慣で治せるものはカフェインと喫煙になり、喫煙はタバコを吸わないと不安やストレスが強まる原因や、呼吸機能の低下により、発作が起こったときに、呼吸困難が強くなる原因になります。

コーヒーに多く含まれるカフェインは興奮物質のため、交感神経を刺激してしまい、不安感を高めてしまいます。

パニック障害の治療方法は?


パニック障害は何らかの脳の機能的な異常があると考えられているため、薬の効果が期待しやすい病気です。

薬での治療が不安と思われる人も多いですが、パニック障害では薬を使った治療を行うのがおすすめです。パニック障害を薬を服用すると、パニック発作や予期不安といった症状が落ち着いていきます。

薬を飲み続けて症状をコントロールできるようになると、不安な場所へ行っても安心感を覚えやすくなり、回数を重ねることで、パニック障害の回復への自信が持てるようになります。

薬で不安症状を抑えた後は、医師の指導の元で精神療法を少しずつ行っていき、不安を根本から治療していきます。

パニック障害の治療方法は個人差がありますが、少なくとも1年間は薬での治療を続けます。経過を見ながら、薬は少しずつ減薬するのが一般的な治療法となります。

ただし、広場恐怖症を併発している場合は、恐怖心の克服には時間がかかることがほとんどです。10年で半数の方が再発するともいわれるほどの病気で、薬を飲み続けている方もいらっしゃいます。

広場恐怖症のように、心因性のものからくる恐怖心がある場合は、パニック障害の治療も焦らずに行っていくことが大切です。パニック障害の治療は、「余裕がある時は不安に立ち向かい、余裕がないときは無理をしない」が原則です。薬は恐怖を感じる場所に立ち向かっていく時に、鎧のような役割も果たします。

パニック障害での薬の役割は?


パニック障害は、抗うつ剤で治療の効果が期待できます。薬でパニック発作を落ち着けることで、パニック障害の症状を緩和することができます。

パニック障害の薬には、①パニック発作を起こしづらくする②パニック発作時に発作を抑える2つの効果があります。パニック発作は、抗うつ剤を中心とした薬物療法によって落ち着きます。

パニック障害にはノルアドレナリン、セロトニン、GABAの脳内分泌がパニック障害と関連していると考えられ、特にノルアドレナリンの過剰な分泌がパニック障害と関係しているとされています。そのため、パニック障害では、幸せホルモンともいわれるセロトニンを増加させる抗うつ剤を飲むことで、パニック障害の治療が期待できます。

パニック障害は生活習慣を見直す必要もあり


パニック障害は薬の効果が期待できる病気ですが、生活習慣を見直すことも大切です。生活習慣が不安定だと、不安や緊張が高まりやすくなる原因になります。

生活習慣を整えることでストレスが軽減し、パニック障害の再発予防にも繋がります。生活習慣の予防としては、不規則な食生活を避ける、睡眠の安定、運動習慣、喫煙、飲酒、カフェインの摂取を控えるなどがあります。

パニック障害の治療は薬が効果的


パニック障害は薬で脳の興奮を抑えながら、精神的な恐怖を医師のカウンセリングや心理療法で治療していきます。パニック障害の疑いがある場合は、広場恐怖症を併発する前に、早めに心療内科や精神科を受診して、医師に症状を相談することが大切です。