第一印象とは、初対面の人の見た目や言葉などから、人柄を判断した印象のことです。

人は相手を判断するときに、視覚や聴覚などから集めた情報に対して、自分の経験や知識を使って相手を判断しています。

そのとき、相手のどのような面を見て印象を決めているのかについて説明したいと思います。

第一印象は何で決まる?


社会心理学によると、人が第一印象を意識するときは、ある一定の心の働きが生まれるといわれています。第一印象のイメージは、心理学では主に3つに分類することができます。

  • ①性格特徴…「優しい」「穏やか」「怖い」などのイメージ
  • ②知的特徴…「頭が良さそう」などのイメージ
  • ③意欲的特徴…「エネルギッシュな」「冷たい」などのイメージ

3つのイメージに共通しているのは、全ての特徴は五感(視覚、聴覚など)で認識できないものということです。しかし、目に見えないもので、私たちは一体どうやって相手の印象を決めているのでしょうか?

目で見て判断できるのは相手の表情、言葉遣い、しぐさなどですが、それらの情報からその人を判断することはできません。そのため、人は自分の経験に基づいて意味付けを行います。

例えば相手のことを「頭が良い」と判断するとき、自分の経験や知識に比べて、相手の方が物事をよく知っていれば「この人は頭が良いな」と判断しやすくなります。

つまり、人は自分の五感で得た情報に、更に自分の経験や知識から想像して相手に意味付けをし、相手を判断していることになります。

第一印象は何秒で決まる?


アメリカの心理学者アルバート・メラビアンによると、第一印象は3~5秒で決まるとされ、メラビアンの法則によると第一印象は「言語情報」「聴覚情報」「視覚情報」から決まるといわれています。

  • ①言語情報…話し手の言葉の意味、内容
  • ②聴覚情報…話し手の声の大きさやトーン、話し方、話す速度
  • ③視覚情報…話し手の見た目、表情や目線、態度やしぐさ

それぞれの情報の影響力は、言語情報が7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%の割合になっています。

言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションとは?


言語コミュニケーションとは、言葉を使うコミュニケーションのことで、手紙やメールのコミュニケーションが挙げられます。

非言語コミュニケーションとは、聴覚情報、視覚情報によるコミュニケーションのことを指し、メラビアンの法則では、人が受け取る情報の9割以上を占めているといいます。

言語コミュニケーションのみだと言葉だけで判断するため、文章だけでは喜怒哀楽が伝わりにくいなど、誤解を招きやすいデメリットがあります。

ですが、言葉に表情や仕草など非言語の情報が加わることで、より自分の考えを相手に伝えやすいメリットがあります。

メラビアンの法則は正しい?


2005年に日本でベストセラーとなった「人は見た目が9割」という書籍は、メラビアンの法則を元にして書かれたといわれています。実際にメラビアンの法則では、視覚情報が55%と他の情報に比べて高い数値を表しています。

しかしメラビアンの法則の実験は、話し手が話の内容に対して矛盾した行動を取ったときに、聞き手はどの情報を優先して、話し手の印象を判断しているのかという内容でした。

例えば話し手の会話の内容が面白い、嬉しいといった雰囲気の話であるのに、表情が暗かったり、声のトーンが低かったりすると、聞き手は話し手のどこを見て相手を判断しているのか?という実験です。

つまりこの実験では、話し手が嘘を吐いたり、隠し事をしているような態度を取っている訳です。

そうした態度を話し手が取ると、聞き手は話し手のどこを見て、本心を見抜こうとするのか実験した結果、話の内容より相手の表情や言葉遣い、雰囲気などを見ていたということです。

メラビアンの法則は、特殊な状況で行われた実験結果の数値であることから、私達の普段の日常生活に当てはまるとは言い切れません。

このような実験の前提を無視してメラビアンの法則の結果だけが拡大解釈されるようになり、「人は見た目で決まる」というような語弊が生まれたと考えられます。

メラビアンの法則は役立つ?


メラビアンの法則は特殊な状況で行われた実験ですが、日常生活でもメラビアンの法則を意識したコミュニケーションを意識すれば誤解を避けることができいます。

例えば「ありがとうございます」とお礼を言うときに相手と目を合わせず、声も小さいと、相手に感謝している気持ちが伝わりにくく、相手に不快感や怒りを与えることになってしまいます。

恥ずかしくて人と目を合わせられない、声が小さくなるという人もいますが、そうした態度も相手からすれば失礼な態度だと思われてしまうなど、誤解されやすい原因になってしまいます。

人と会話するときは、相手がどう思うかを心がけるコミュニケーションを意識してみてください。

第一印象は当たっている?


第一印象が大切だといっても、第一印象だけで、相手の全体像は把握できません。

人は相手と関わり続けていく中で、徐々に相手の全体像をつくりあげる作業を無意識のうちに行っています。

例えば第一印象で「穏やかそうな人」という印象を抱いたとします。すると、自分の知識や経験から、穏やか…「優しい」「あまり怒らない」「マイペース」などの判断が連想されていき、相手はこういう人物だろうとイメージが生まれます。

この結びつけのやり方は生活環境や価値観によって人それぞれですが、人は相手から得た情報を手掛かりに、無意識でイメージの結びつけを行っています。

ただ、相手は自分ではないので、穏やかそうな人でも、実際はせっかちな性格であるということがあるように、見た目の印象と性格が違うこともあります。

すると、せっかち…「怒りっぽい」「時間にうるさい」などの連想も生まれていき、こうした複数の結びつけを行うことで相手の性格がより分かってくるので、第一印象がその人の全てであるとは判断できません。

第一印象が全てではない


人は第一印象を抱くものですが、それで全てが決まることはありません。

「第一印象で全てが決まってしまう」と思い込むことで、第一印象を良くしなければと緊張し、面接で思うようにアピールできなくなるデメリットもあります。

相手の失礼に当たらないような言葉、行動、身だしなみに気を付ければ、第一印象で悪く思われることはほとんどありませんので、第一印象で全てが決まるという極端な考えは持たない方が良いと思います。